4月に行った風の会主催の講演会で、ジャーナリストで篠山市原子力災害対策検討委員の守田敏也さんをお招きし、お話を聴いた。テーマは「亀岡市の原発防災計画/まちは私たちを守ってくれるのか?」

亀岡市の防災計画

亀岡市の防災計画書には、原発事故避難計画については何も書いてありません。つまり、まちは皆さんを守ってくれません。国は、原発から30キロ圏内の住民が避難するための計画を義務づけていますが、実際には全く十分ではありません。大飯原発から60キロの亀岡市にも、原発避難計画は必要です。

原発事故避難計画

福島原発事故は今も止まっているだけで、収束はしていません。最悪のシナリオはまだ消えたわけではないのです。しかし国は放射能汚染に対して十分な対策を講じないし、適切な避難計画も作りません。  
原発からの距離にかかわらず、避難計画は絶対に必要です。真剣に避難計画を作ることは、原発事故の現実を知ることにつながり、脱原発の方向へ進むことになるからです。

避難訓練の意味

防災心理学では、災害時に避難を遅らせるものとして、?深刻な事態でもそれを認めず、事態を正常と考えること、?とっさの時に周囲の行動に合わせてしまうこと、?パニックを恐れて危機や危険を伝えないことの3つのバイアス(偏見)があります。
韓国でおきたフェリー事故では、このバイアスが犠牲者を増やしました。原発事故の場合も同じです。このバイアスを解くためには、避難訓練が有効なのです。

想定にとらわれない

東日本大震災で、釜石市のハザードマップの津波災害エリアでは死者は無く、エリア外で多くの犠牲者が出ました。想定はあくまでも人間の推論で、それを超えることがあります。
危機を感じたらすぐに行動すること、率先避難者になることが大切です。人を救うためにもまず自分が逃げることです。
釜石市では日頃防災教育を受けていた中学のサッカー部員たちが、率先避難者となって隣の小学生たちに呼びかけ、また近くの保育園の子どもを抱きかかえ、乳母車にお年寄りを乗せて逃げました。それを見た大人たちも逃げ、難を逃れました。これは「釜石の奇跡」と呼ばれていますが、原発災害も同じで、危険は自ら判断し、率先避難者になることが重要です。

原発災害に備えて

原発事故でも、まずは必要性を感じたら躊躇せずに避難すること。そして備えとしては避難訓練が有効です。放射能は見えないので、事前学習で知識を持っておく事も大事。それから避難した際、家族、友人、恋人と落ち合う場所を決めておくこと。また、遠く離れた知人と防災協定を結んでおく事も必要です。どんな災害にも備蓄が大事ですから、持ち出すものを用意しておきます。ヨウ素剤の備蓄も必要ですが、無い場合は昆布(煮出して汁だけ飲む)でも代用できます。そして遠方へ逃げることが肝心です。

いかに生きるか

私達は今、放射能がある環境でいかにして生きるのかを問われています。まずは原発ゼロ社会の実現をめざし、被ばくの影響と向き合い、被ばく差別を許さないということです。
そして放射能だけでなく、あらゆる危険物質を避け、新鮮な食べ物を楽しく食べてください。免疫力は前向き、温かい気持ちの時に高まり、理不尽な仕打ちで下がります。
放射能に苦しむ関東・東北の人々を、西日本が温かい気持ちで支援し、国民全体が温かい気持ちになる事が必要です。
原発が止まっている今の状況や反原発運動を盛り上げたのは、福島を飛び出し全国で訴えかけた人たちの力が大きいと思います。
東西を超えて力を合わせ、この困難を乗り越えることが大切だと思います。

守田敏也氏

同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、フリーライターとして取材活動・社会問題全般に関する研究を進める。3・11以降は原発事故の取材と放射線防護に専念。2012年3月、物理学者の矢ヶ?克馬氏と『内部被曝』(岩波ブックレット)を上梓。