亀岡市議会3月定例会で、平成26年度一般会計予算341億1千万円が賛成多数で可決された。特に議論が集中したのは、インターナショナルセーフスクール(ISS)認証取得経費と、京都スタジアム(仮称)整備関連事業経費について。
ISS認証取得
亀岡市は平成20年3月に世界保健機関(WHO)協働センターにより国内初となるセーフコミュニティ(SC)認証を取得したが、その理念をさらに児童・幼児や保護者、また地域へ浸透させるため、市内10カ所の小学校、保育所(園)でISSの認証を取得するという。
▽けが及びその原因となる事故、いじめ、暴力を予防することによって子ども達が安全で健やかに成長できる学校や保育所づくりに努める取組であるが、うち400万円は国際認証取得のため、翻訳、通訳、審査員の渡航費用等に充てられる。認証取得にはこだわらず、実質的取組の方に予算を充てるべきではないか等、意見が集中した。
▽市は、ISS認証取得は国内初SC認証取得都市の責務であると説明。実現すれば国内4番目の認証取得となる見込み。国内初取得校は大阪教育大附属池田小学校。
京都スタジアム(仮称)整備関連事業
市は府の京都スタジアム(仮称)誘致に用地を無償提供する条件で手を挙げ、平成24年12月に亀岡駅北農地が建設予定地として決定した。そのため、農地を買収し、(仮称)京都・亀岡保津川公園13.9㌶を整備する予定。このスタジアム関連事業で17億円を予算計上した。
解決されぬ課題への懸念
スタジアムが地域活性化の起爆剤となるなどの期待から賛成する意見がある一方、財政、治水、交通渋滞、地下水源や自然環境への影響が明らかになっていないなど、議論が不十分であることに加え、市民の合意形成ができていないことを理由に反対する意見があった。
経済効果予測への疑問
測り知れない経済効果をスタジアム誘致の理由のひとつに掲げていた市は、京都学園大との共同研究により初めて数値化された資料を議会に提示した。京都サンガがJ2リーグに属していることを前提に厳しく見積もったと説明されたこの資料に対し、算出根拠に問題があるとの指摘があった。観客数見込みとしてサンガのJ1、J2時代の合計から平均値が採用されており、チケット収入はJ1全体の平均を上回る2500円と設定されているなど、不適切な点が多数指摘されたが、市長は主観の問題であるとした。
財政負担への危惧
また、土地買収の進捗については、現時点では買収の交渉内容は明らかにできないが、未だ2%の地権者の同意が得られていないと答弁した。
さらに、スタジアムの誘致に関連する亀岡市の財政負担は、できる限り国庫補助金や優良起債等の活用を図ることとしているが、確実性が担保されていないとの指摘がなされた。
環境保全団体からの要望
建設予定地を含む一帯を生息地としている天然記念物アユモドキへの影響について市は、これまで保全をしてきたのは地元住民であり、スタジアムを機に攻めの保全が可能になると説明しているが、環境保全団体等からその保全策の実現性の低さを理由に、スタジアム計画の白紙撤回を求める要望も寄せられている。
浸水災害・交通渋滞は?
まちづくりの基本となる都市のマスタープラン等にこの事業が整合していないとの指摘に対しては、整合性はあると強調。台風18号で建設予定地一帯が浸水したことから、この場所にスタジアムを建設することで治水安全度が低下するのではないかとの質疑には、低下しないような工法で行うと説明。交通渋滞についても、大方は公共交通機関で来場すると予想しており、車での来場者は亀岡・大井インターからアクセス道路へと誘導するため、生活道路への侵入増加の心配はないと答弁した上、懸念は理解するが、誘致が決定した以上、職員一丸となってこれを成功させると市長は意気込みを語った。
市議会質疑の原則
亀岡市議会基本条例によると、議会は、市長が提案する重要な政策等について、議会審議での論点を明確にし、その水準を高めるために、次の点を明らかにするよう求めることとなっている。
一、提案の理由及び経緯
二、他の自治体の類似する政策等との比較検討
三、市民参加の実施の有無とその内容
四、総合計画との整合性
五、政策等の実施に係る財源措置
六、将来にわたる政策等のコスト計算
これに基づき、審査段階では活発な質疑、討議が行われたが、いずれの点も明らかにされないまま、採決の結果、賛成多数により可決された。
昨年の12月議会では、スタジアム用地の無償提供について、市民意思を問うことを求める市民3千73名が住民投票条例案制定を直接請求したが、市民の代表である議員が構成する議会で十分に審査できるなどとして、市議会はこれを否決した経緯がある。