◇魚類学会、専門家会議に質問書

 国の天然記念物「アユモドキ」など希少生物は守れるのか−−府が亀岡市に建設する球技専用スタジアム計画をめぐる環境保全専門家会議に対し、日本魚類学会は5月12日、質問書を提出した。背景には、希少生物の十分な保全対策が講じられないまま建設が進んでしまうのではないか、との懸念がある。【村田拓也】

 環境保全専門家会議は昨年6月〜今年3月、建設予定地14ヘクタールを含む周辺の農地など52ヘクタールで動植物調査をした。その結果、淡水魚のアユモドキのほかに、特別天然記念物「オオサンショウウオ」や環境省の絶滅危惧1B類に分類される「ナゴヤダルマガエル」(アカガエル科)などの生息を確認した。

 日本魚類学会自然保護委員長で、岐阜経済大の森誠一教授(環境生態学)らによると、アユモドキは岡山県と亀岡市のわずか数カ所だけで生息が確認されている希少種。オオサンショウウオは環境省のレッドリストで絶滅危惧2類に分類される日本の固有種で岐阜県以西に生息し、平均60〜70センチ。世界最大のサンショウウオといわれる。ナゴヤダルマガエルも日本の固有種で、中部から山陽地方にかけての本州と四国の一部に生息しているという。体長は数センチでずんぐりして足が短いのが特徴。湿地や水田付近に生息し昆虫やクモなどを捕食する。

 森教授は「いずれも環境変化に弱く、自然のままでも保全対策が必要なほど。スタジアムのような大規模工事が生態に多大な影響を及ぼすのは必至だ」と指摘する。更に「現行計画のまま進めようとするのは理解できない。場所の変更がベストだが、現在の場所で工事を進めるにしても、もっと科学的な保全の根拠を提示してほしい」と訴えている。

 日本魚類学会が提出した今回の質問書の内容は、保全策は予定地でのスタジアム建設を前提にしているのか▽この1年でどのような調査をし、環境保全策を検討してきたのか▽「共生ゾーン」でアユモドキなどの生物と共生を図れる根拠はあるのか−−などとなっている。23日現在でまだ回答はないという。

 公益財団法人の「日本自然保護協会」と「世界自然保護基金(WWF)ジャパン」もスタジアム計画の根本的見直しなどを要望している。

 環境保全専門家会議は、予定地に生息するアユモドキの産卵・生育環境について、亀岡市などが6月上旬から実証実験することを明らかにしている。