太陽光発電と畑作 ~見学と勉強会~

イベント報告

◆2018年7月25日に開催した見学会の報告です◆

◆案内チラシ

◆見学会レポート

先日は猛暑の中、亀岡営農型太陽光発電所の見学と勉強会にご参加いただいた皆さま、
誠にありがとうございました。
今回の見学会は広大な農地が拡がる河原林町でも3軒しかない専業農家の1軒であり、
しかも若い、子育て現役中の井上さんに、
日本クルべジ協会とのご縁を取り持っていただいたことから始まりました。
井上さんは、亀岡営農型太陽光発電所の建つ畑の持ち主で、
日本クルべジ協会の柴田理事長(立命館大学OIC総合研究機構教授)をご紹介下さいました。
暑い中、またお忙しい中、私たちの突然のお願いにもかかわらず、
現地での講話を快くお引き受けいただいた柴田理事長、
そして間に入っていろいろ段どりをしてくださった日本クルべジ協会の小澤さんに、
心から御礼申し上げます。

 
クルべジとは炭を土に入れて温室効果ガスであるCO2を地中に隔離し、
その畑から採れた野菜(クールベジタブル)を食べて、 地球温暖化防止に貢献できるというものです。
亀岡市内ではスーパーマツモトでクルベジ野菜が販売されています。
亀岡の桂川東地区には大きな農地がありますが、農業者の高齢化が進んでおり、
また農業だけでは若い世代は生活が難しいのが現状です。
今回の見学地、河原林でも専業農家は3軒しかありません。
周辺には多くの放置竹林があり、亀岡牛が飼育されていることから、
竹炭と堆肥を混ぜたものを畑の土に入れています。
そしてその畑に、中型トラクターも通れるよう鉄パイプで組まれたフレームの上に、
夏の厳しい日差しを遮りながら発電する、1736枚ものソーラーパネルが設置され、
総定格出力約538KWの電力を生み出しています。
放置竹林や牛の糞尿といった地域の困りごとの解決、CO2の削減、
農業だけではなかなかなりたちにくいなかの副収入など、
さまざまな問題解決を同時に目指す実験的なプロジェクトです。

 

柴田理事長の「鎮守の森」構想には、
農地太陽光発電による農村での安定収入&施設園芸(クルべジ)のダブルインカムの実現、
太陽光発電による地域電力供給と二酸化炭素削減効果による“Cool Vege”brand.があります。
日本全国どこの地域も、地域の担い手が減少するなか、 もうかる仕組みをつくれば、
地域に人が集まるのではないかという考えで取り組まれています。

ソーラーパネルで日差しが遮られるのに野菜ができるの?という素朴な疑問があります。
農地として認可を取られた際には光が少なくても生育できる、シイタケとみようがでした。
でも実は植物は、上からの光だけでなく、横からの散乱光を大きく受けて光合成をしているそうです。
また、光は多ければ良いというものでもなく、小松菜やほうれん草は、
光にあたりすぎないほうが甘くてやわらかいというのもあります。
チンゲン菜や小松菜はそこそこできて、じゃがいもも小振りですが収穫できます。
まだ2年目の今年は、シイタケ、みょうがのほかに、にんにく、陰性植物の榊が植えられています。
また、植物には日照より温度が重要だそうで、温暖化と酷暑が続くこれからは、
パネルにより日影を作れるこの方式は、温度管理の面でも有利なのかもしれません。
 
今、作付けされていないスペースは、草がおい茂っていました。
上からの光が少なくても植物は立派に育つということです。
畑の両側には光の量を測定する長い棒状の計測器が並び、いかにも研究中という感じでした。
光の量は緯度によっても違うし、野菜の種類によって、どれがどのくらいの光量が適当なのか等、
また、できるだけコストをかけずにできる方法で、どれくらいの規模が一番効率がよいのか、
持続可能な農業への取り組みはまだはじまったばかりです。



太陽光発電につきもののパワーコンディショナー、マスターボックス、キュービクル等も並んでいました。
ソーラーパネルやこれら設備の初期投資額に対して、電力会社の固定価格買取期間、20年間の売電利益、
税金、融資利息、借地料、減価償却費などを含めた複雑な事業採算計画が必要です。
研究にもお金の問題が避けられません。
この土地は元々田んぼだったため、粘土質で水はけが悪く、
まわりも田んぼなので何百万円もかけて周囲にU字側溝を設置して暗渠にし、
水が入りにくいようにしたそうです。
また、ここは圃場整備された土地なので、30cmほどの表土の下は、かきまわされてぐちゃぐちゃなので、
石を取り除いて畑として使えるようにするのに1年かかったそうです。
なぜ、そんなところに?…と思ったのですが、
発電所から半径2km圏内に電気を使うところがあること、
何よりも高圧電流が流せる電線が近くにあるということ、
そして地権者の理解がある、ということが、この場所になった理由だそうです。
 
柴田理事長は「持続可能」「誰が何のために」という言葉を何度も口にされていました。
私たち風の会は、よそからもってきたり、お金のかかる、そして使われなくなるハコモノではなくて、
亀岡に今あるものを生かしたまちづくりを、という思いで活動しています。
「知識をつけるだけではだめだ」「人の気持ちを変えるのは難しい」ともおっしゃいました。
ただ、亀岡はまだ恵まれている。よそは高齢化がもっと進んでいるとも。 私たちに何ができるのか、
何をするのか、今までも、そしてこれからも大きな課題だと改めて思いました。
とりあえず、すぐにできることは、クルべジを多くの方に知っていただくこと、
メガソーラーにも色々あるのだと知っていただくことでしょうか。

 ◆一般社団法人 日本クルベジ協会のホームページ
    https://coolvege.com/

                    ♣

見学会の終了後、参加者の方から今日のお話に関連する本の紹介をいただきました。
   『信州はエネルギーシフトする』
    田中信一郎(元長野県エネルギー政策担当企画幹)著  築地書館刊 1600円+税
    http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1551-1.html

また、住民、自治体、地域の企業が、
地域の条件にあった再生可能エネルギーによる発電所を設立、運営することで、
地域を活性化する姿を描いたドキュメンタリー映画が、近々京都市内で上映されます。
    映画『おだやかな革命』
    出町座(京都市上京区) 075-203-9862
    8月4日~10日 10時より
    8月11日~17日 0時40分より
    一般 1800円 学生 1000円(大学生以下3才以上、専門学校生含む)
    シニア 1100円(60才以上) 障がい者 1000円(介助者1名も同料金)
    http://odayaka-kakumei.com/
    予告編はこちら
    https://youtu.be/27kAAZEAizA

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