2015年8月10日
京都府知事
山 田 啓 二 様

京都・丹波/亀岡 市民まちづくり風の会
くらしを見つめる会
かめおか夢咲ネット
亀岡水害問題連絡会






京都スタジアム(仮称)計画に関する説明会について(依頼)

 私たちの住む京都府亀岡市は、保津川の流れを中心に四方を山々に囲まれ、アユモドキをはじめ多様な生物が棲む豊かな自然環境と美しい景観に恵まれ、さらには平安京造営以来から、都との関わりの深い歴史・文化を育んできました。
 また、当地には、保津川及びその支流と沿川に、国指定の天然記念物アユモドキの生息地があり、特に餌を供給する役割のある水田と用水路を含めた一帯は、仔稚魚の成育場として重要な役割を果たしています。ご承知のとおり、アユモドキは、日本のこの地と岡山県の2か所でしか生息が確認されていない極めて希少な淡水魚であり、亀岡のみならず日本の豊かな自然の象徴であり、大切に保護し未来に引き継いでいかなければなりません。
 同時にこの地の歴史は、水害との闘いでもありました。進行中の桂川河川整備計画は未だ当面計画(10 年に一度の洪水に対応)が終了した段階です。日吉ダムの完成により治水安全度は高まったとされていたにもかかわらず、一昨年(H25 年9 月)の台風18 号では甚大な被害が発生しました。府はこの出来事を、百年確率を超える災害として位置付けたようですが、昨今の地球規模での異常気象は、何年確率という想定自体がもはや意味をなさない事を物語っています。

 ところが現在、この地において、京都府と亀岡市は、球技専用のスタジアムを建設する計画を進め、去る6月9日には事業事前評価を、また6月議会では実施設計費に加え建設費をも予算化し、アユモドキの保全をはじめ、治水、地下水源、交通安全など生活環境への影響と対策等々について、地元住民に何ら説明しないまま、実施設計及び工事を一括して発注されようとされています。
 環境アセスが法制化されている時代にあって、しかも「環の公共事業」という他府県の模範とも言うべき公共事業事前評価システムを持ちながら、本来の規定に則り、住民の意向を尊重した事業の進め方がなされていないことに、いささか危惧の念を抱いております。

 このスタジアム計画については、当初から関係学会や団体から多くの問題が指摘されており、京都府はそれらに対し、環境保全専門家会議を設置して意見を聴きながら慎重に進めるとし、約2年の時間と多額の費用、労力をかけて調査検討を進められてきましたが、いまだ自然環境保全対策の課題を例に挙げてみても、解決できていません。そのような中、デザインビルド方式によって、調査検討と工事を同時並行で進めるという方法を、専門家会議の了解を得たことを理由に導入するとされました。

 専門家だけでなく亀岡市民の声を聴くべきだとの指摘に対し、知事は「最終的には選ばれた議会や首長の意見を亀岡の意見として尊重するのが民主主義の基本である」と議会の場で発言されましたが、京都府は、別紙のとおり平成22年12月に、「京都府行政運営の基本理念・原則となる条例」を制定されております。
 基本理念として、
  1.人が大切にされるために、人がつながり支えあう、心豊かな社会づくり
  2.府民が自ら主役となり、地域の魅力を高める自立した社会づくり
  3.多様な主体がともに役割と特性をいかし、連携・協働する社会づくり
 の3つを掲げ、また基本原則として
  1.府民が起点となり、府民がいかされる府政運営
  2.府民の安心と活力の向上を支える府政運営
  3.府民によく見える、信頼される府政運営
  4.府民の参画と協働を尊重し、支える府政運営
  5.市町村等との連携・協力による府政運営
 の5つを掲げています。また京都府は、平成19年に、「『環』の公共事業ガイドライン[改定版]」(別紙記載)を策定、ホームページ上でも公開されています。

 今回のスタジアム計画は、まさに地元亀岡市の全ての市民にとって、今後の市政運営や財政運営、まちづくりの観点から極めて重大な問題であり、将来の亀岡を左右する問題です。

 つきましては、条例の定める府政運営の基本に従って、スタジアム計画の内容や進め方について、また、計画に伴う、治水対策、地下水源対策、飲料水の安全対策、鉄道輸送計画、道路アクセス問題、道路渋滞対策、生活道路の安全対策、亀岡市の財政負担等々にまつわる、市民の心配や不安、あるいはリスクについて、計画地周辺はもとより、関係する全ての自治会や住民に対して、事業主体として直接説明する機会を設けていただき、市民が安心を得られるよう、また市民との合意が形成された上で事業を前に進められることを、ここに依頼申し上げます。

 なお、内容をご確認ご検討の上、誠に恐縮ですが、出来る限り早急に、書面にてご回答をいただくようお願いします。また、依頼書並びにお示しいただくご回答についてはWEB等で公開することとしておりますので、ご理解いただきますようお願い致します。

●回答の送り先・問い合わせ先:
京都・丹波/亀岡 市民まちづくり風の会
〒621-0815 京都府亀岡市古世町3-16-8-306
TEL 080-9164-7051 事務局 (青井)







別紙
■京都府行政運営の基本理念・原則となる条例(平成22年12月24日、京都府条例第38号)抜粋
(基本理念)
第1条 府政は、府政運営及び地域づくりが次に掲げる基本的な考え方(以下「基本理念」といいます。)に基づき進められるように、行うものとします。
(1) 府民が人間として大切にされるために、だれもが社会の一員として参画することができ、府民同士が尊重し合い、つながり、支え合う、人にやさしい社会を実現すること。
(2) 府民の自主的な活動が大切にされ、地域の魅力を高め合う自立した社会を実現すること。
(3) 府、市町村、府民、民間の団体等がともにその役割と特性をいかして、連携及び協働をし、地域の課題を解決するための活動が豊かに展開される社会を実現すること。
(基本原則)
第3条 府政運営は、自治の主役である府民が起点となり、府民生活において府民が何を求めているかを十分に把握し、府民の期待にこたえることができるように、行うものとします。
2 府政運営は、府民及び地域の持つ力が引き出され、相互に働き合って、最大限いかされるために必要な環境を整えることができるように、行うものとします。
第4条 府政運営は、府のめざす方向性を、府民参画のもと、将来構想、基本計画等の形で明らかにし、府民がこれを共有することができるように、行うものとします。
府政運営は、府民の社会的な立場や状況及び地域の実情を踏まえ、府民が安心・安全で生きがいや希望のある生活を送ることができるように、行うものとします。
3 府政運営は、効果的かつ効率的な事業の実施、健全な財政運営等により、長期的に安定した財政基盤のもと、持続的かつ自立的に施策等を展開することができるように、行うものとします。
第5条 府政運営は、府政に関する情報について、多様な方法で、かつ、わかりやすい形で積極的に提供し府民との共有を図り、府民への説明責任を果たすことにより透明性を確保するように、行うものとします。
第6条 府政運営は、府民のだれもがその立場や状況に応じて、その自由な意思により、様々な手法で社会の活動に参画することができるように、行うものとします。
府政運営は、政策の立案、実施、評価等の過程に府民が参画することができる機会を適切に確保することができるように、行うものとします。
3 府政運営は、府民、民間の団体等が地域の課題解決等のために行う活動を尊重するとともに、必要に応じてこれらの活動を支え、協働することができるように、行うものとします。
第7条 府政運営は、大都市に関する特例その他の市町村の行財政状況を踏まえ、適切な役割分担と協調のもと、十分な連携と協力により、地域の行政課題に的確に対応した、府民にとって効率的で便利な行政サービスが提供されるように、行うものとします。
2 府政運営は、地域の持つ特性をいかし、互いに良い効果を引き出し合う広域的な施策、府が持つ資源をいかした専門性の高い施策や市町村間の均衡を支える施策を実施する等、総合的な調整の役割を果たすように、行うものとします。
3 府政運営は、府域を越えた行政課題等について、国、他の地方公共団体等との連携と協力によりその解決を図ることができるように、行うものとします。
(知事その他の執行機関の責務)
第8条 知事その他の執行機関は、基本理念及び基本原則に基づいて、府民が府政に関する情報を知ること、府政に参画すること、府政による行政サービスの提供を等しく受けること等ができるよう府政運営に努めなければなりません。
2 知事その他の執行機関は、基本理念及び基本原則に基づいて、府政運営に必要な制度及び手続の整備及び充実に努めなければなりません。
3 知事その他の執行機関は、基本理念及び基本原則に基づいて、府政運営に必要な組織の整備に努めるとともに、府民とともに地域の課題に対応し、府政運営を担う能力を有する職員の育成に努めなければなりません。

■『環』の公共事業ガイドライン[改定版] (平成19年12月/京都府企画環境部・農林水産部・土木建築部)より
●施策の基本方向
地域の自然、生活、文化等を含む幅広い意味の環境を念頭に、負荷の低減のみならず、積極的にそれらを再生・創造する視点から、原則として府のすべての公共事業について、ガイドラインに沿った評価を実施します。
(1) 評価の方法は、担当職員による評価と、評価結果の外部有識者や地域住民による審査を組み合わせ、客観性と透明性の高いものにしていきます。
(2) 評価を通じて、環境にプラスとなる事業を積極的に推進する一方、環境に著しいマイナスとなる事業は、たとえ経済効率性が高くとも見直しを実施します。
地域住民等の参画も得ながら構想及び実施段階の評価を実施することで
、地域の環境情報を集約し、さらにこれらの情報を今後の事業に活かしていくことで、『環』の公共事業のPDCAサイクルを確立し、地域の自然や文化等と調和した公共事業を実現します。