保津川(桂川)の恵みは、自然や生き物と共に亀岡の歴史や文化を育んで来ました。
いま、私たちは未来に何を残していくのか。

淀川水系流域委員長の宮本博司(現株式会社樽徳商店会長兼社長)さんに、
川と人と生き物のお話を伺います。

講師紹介

宮本博司さん

1952年京都生まれ。
京都大学大学院修士課程土木工学専攻修了。

1978年に旧建設省に入り、技官として河川行政一筋に取り組む。河川開発課課長補佐などを経て、苫田ダム、長良川河口堰を担当。

その後、国交省近畿地方整備局淀川河川事務所長として淀川水系流域委員会の立ち上げに尽力。同局河川部長をへて本省河川局防災課長を最後に2006年辞職。

現在は(株)樽徳商店会長兼社長。

日時 2014年3月30日(日)14時?16時
場所 ガレリアかめおか 2F研修室
定員 25名(当日参加歓迎・定員オーバーの場合、申込者優先)
参加費 カンパ制

ご報告

「川と人と生き物のお話」宮本博司さん講演会

日時:2014年3月30日(日)14時~16時
場所:ガレリアかめおか 2F研修室
定員:25名(当日参加歓迎・定員オーバーの場合、申込者優先)
参加費:カンパ制

市外からも多数の皆様にお集りいただきました。
亀岡からだけでなく、遠方から宮本さんに会いにこられる方がいらっしゃる理由がよくわかります。昨日初めてお話を聞いたメンバーもすぐに宮本さんのファンになってしまいました。

講演メモの一部です。宮本さんのお話の中で最も印象的だったのは、役人人生を変えたと言う苫田ダムと流域委員会のお話でしたが、それは宮本さんの声で直接お聞きすることでしか伝わらないものがあると思いますので、それ以外の部分をご紹介します。

川は知り尽くせない。だから防ぐのではなく凌ぐ

実感とか、生き物の気持ちに共感するという気持ち、取組がなかったら河川は触ってはいけない。川は数字でいじってはいけない。川は生き物だ。淀川の委員会でそういうことを勉強させてもらった。

役人は、一般の人間より川のことをよく知っているつもりでいるが、傲慢だ。川は無限大。知識が1であろうが、100であろうが、知り尽くすことはできない。川は知り尽くせない。だから、自然にできるだけ逆らわず、謙虚におずおずとやり直しがきく範囲でやらなければいけない。

異常気象などと言うものはない。人間の計り知れないことが異常というのであれば、自然に通常の状態などはない。地球ができて45億年。異常降雨などという発想自体がおかしい。たかだか100年ほどのデータでもって、いえることはない。

自然現象は、いつ、どこで、どのような現象がおこるかわからないもの。「想定」しても「想定外」が起きる。想定することは大切だが、ひとつの想定を正しいと思い込むのは×。想定はあくまでも想定。いくつもの想定を行う。想定が間違っていることを想定する謙虚さが必要。

100年に一度発生する洪水。→いつの日にか氾濫しないようにします。ということをやっている。「いつの日にか」です。150年に一度発生したときは「想定外です」。

いつできるのか。50年後か100年後かわかりません。その間に死者がでたら・・・仕方がない。というのが現在の治水計画。工事をするための計画。明日来るかもしれない洪水から住民の命を守るという発想ではない。

洪水により命を失うということはどういうことか。「浸水」によって大量の死者はでない。大量の死者が出るのは「流される」「溺れる」。「流される」は堤防の決壊によって起きる。いつ、どのような規模で起こるかわからない洪水に対して住民の生命を守るためにできることは2つ。

①避難体制の整備
②人家密集地域堤防決壊回避すること。

堤防の緊急補強は必要・・しかし、洪水を川に押し込めて防ぐと・・→防ぎきれない壊滅的被害。自然現象では我々の理解をはるかに超えたことが起きる。何が起きるかわからない自然に対して防ぐという発想自体が傲慢。いかに凌ぐかが重要。

人か魚か、ではない。人も魚も

不自然な人為的行為は必ず人間にしっぺ返しがくる。

昔から、治水か環境か、人の命か魚の命か、というが・・・これは間違っている。魚の命にとって危ないようなことをやったら、それは必ず人間にとっても危ないこと。

人の命も、魚の命も守るというやり方はある。
目先の安全性、利便性、快適性を求めて川を変えて、洪水を押し込めると、危険で脆い環境へ。
自分たちの暮らし方を変えて行かなくてはいけない。

既に人がたくさん暮らしているのに、そんなことできるのか?

人間50年、下天のうちをくらぶれば 夢幻の如くなり。
このような暮らしになったのは、たかが夢幻のような50年60年である。
後戻りできないと言うのはおかしい。

質疑応答で印象的だったやりとり

・行政が勝手に決めて進めてしまっている状態で、市民は何ができるのか。
・行政の既定の基準以外にも注視すべきものがあるときに、どうすればそこに目を向けさせることができるのか。法律は変えられないのではないか。
・住民は遠い将来に向かってなにができるか。

その質問のすべてに共通する答えとして、

こうやったらうまく行く、という決定的な方法論はない。
住民が常に地域のことを考えて
現地で役人と共有するということを積み重ねていかなければならない。
住民が常に感じて、アプローチする努力が必要。
住民にとってはしんどいことですが、住民力が根本。
長良川河口堰のように、国交省を追い詰めて、法律までかえさせたのは住民力があったから。一部の人だけが反対運動していると言うことだったら、相手にされない。
最後はひとりひとりが自分ができることをやっていって、共感できる人をふやしていって、世の中を動かすしかない。
自分が何ができるか、ということしかない。

参加者のご感想

「川と人と生き物のお話」宮本博司さん講演会

日時:2014年3月30日(日)14時~16時
場所:ガレリアかめおか 2F研修室
定員:25名(当日参加歓迎・定員オーバーの場合、申込者優先)
参加費:カンパ制

アンケートの内容をご紹介します。

・沖縄の問題、その他住民と国との争いも、国交省と地域住民との軋轢も同じ。出発点を共有すべきですね

・良い話がきけた。河川行政に深く関わった方が自分の意見を発信されていることに宮本さんの素晴らしさを感じた

・自然の状況変化には限界が見えないことを説明していただき、よくわかった気がしました。自然体で生活するようにしています。何事も固定的に考えないように。ありがとうございました。

・住民が関心を高める事。元行政の方から本日の話を聞く事ができた事。以前からこのような話を聞く機会がなかった。

・自分ができることをやって、共感する人を増やす・・・難しいけどそれしかないのかな、とつくづく思った。

・宮本さんが自分から現場を見てから心が変わったように、現場を知ってもらうことが大事だと思います。

・宮本さんの人柄が良かったです

・勉強になりました。人間のエゴやきれいごとで争っているだけだと思いました。

・経験に基づいた話でためになった

・とても感動したし、自分に取って話はぐさっとしみわたった

私たちも、住民が地道に自分のできることを頑張っていくしかない、という想いを新たにしました。

レポート:Wind Report No.7 川と人と生き物のお話 宮本博司さん講演会


Wind Report No.7 川と人と生き物のお話 宮本博司さん講演会(PDF)