スタジアム建設が周辺にもたらす影響を国土問題研究会事務局長・技術士の中川学さんに伺いました。
遊水機能をもつ土地を開発して巨大構造物を建設したり、周辺を埋め立て住宅地にしたりするにあたり、どのような検証をすれば安全であることが確認できるのかをお聞きしたかったのですが、現在のところ、設計内容が不明なままであるため、答えが出せないとのことでした。
「本来これらの設計内容も含めて考えなければ、選定も出来ないはずだけれど?選定の内容はどうなっているの?」との問いに、亀岡市内の候補地の中から現在の建設予定地が唐突に決まり選考時の比較方法も、決定理由も亀岡市は行政として記録していないとしかお答えできませんでした。
スタジアムにピロティ方式導入するとどうなるかについてもお伺いしました。
現在ピロティ方式を導入している横浜スタジアムの場合、鶴見川の治水を流域ぐるみで行っているそうです。上流が丘陵地で、そこで急激に開発が進んだため、丘陵地の一戸建ても、行政の補助で浸透マスを作ったとのことです。
大きな範囲で効果の出るように調整している。亀岡の場合、単純にスタジアムだけをピロティ方式か同等の効果を得られる工法をとったとしても、それだけで周辺の治水安全度を語ることはできません。
いずれにせよ、亀岡駅の北側に広がる農地を開発することについては、相当慎重にやらなければ周辺に浸水被害が発生するでしょう。
最初、盛土のための土は川底からとってくるような市の答弁でしたが、最近は高水敷からとってくる、と言われています。そのことをお伝えすると、
高水敷??そんなところから取ってきても意味がないでしょう。とおっしゃっていました。
しかし、まだ計画が明らかになっていませんので、実際のところ、どのようにするかわかりません。
現状は10年に1度の降雨に対応できる治水安全度であると言われていますが、雨は自然のものです。流域平均で300mmといっても、時間分布、地域分布を考えなければなりません。
量、地域、時間。そこで決まるのです。
量だけを決めても、地域、時間はさまざま。そして、最近の雨の特徴は、短時間、集中的です。(台風18号の際は、長時間、広域的降雨でした。京都全域で200mm以上降り、大河川は全て氾濫しました)10年に1度と言われて安心していられるわけではないのですね。
治水上の不安がある場所を開発して、もし浸水しても行政は責任を取りません。水害裁判をしても、勝てたためしがない。唯一、一部勝訴となったのは多摩川の決壊だそうです。
少しの見舞金や借り入れ助成はあっても、基本的には自己責任。行政が損害を補償してくれるわけではありません。命や財産が危険に晒されそうになっていることについて、そこに住んでいる人たちが危機感をもって立ち上がらなければ、何も始まりません。
中川さんの許可をいただいて、中川さんがスタジアムの問題点についてまとめたものを公開します。